himatsubu876

📖 ⑲

今よりも店内入口にスペースがあり、コンクリート打ちっ放しの壁だった頃。写真家や陶芸家へ貸し出し、期間限定のギャラリースペースを開設したことがあった。物作りに励む作家は少なくない。個々の思いが詰まった作品を世に知らすネットワークも以前に比べ広がりを感じる。ところが、実際に個展を開くとなると課題は山積み。実際に自身もそんな経験をしたことがあった。費用はもちろん、搬入から撤去に至るまでの日程調整など、ギャラリーを探すだけでも一苦労と聞く。名のあるギャラリーと比べれば有益な環境とは言えないが、以前から作家の活動を応援したいという思いがあった。しばらくすると作家として活動なさるゲストへの貸し出しが決定する。普段はゲストと美容師。期間中は作家と美容師へと変わった。展示の準備段階ですら作家としての表情や作品への思いを肌で感じたじろぎ、なかなか声を掛ける事が出来なかったのを思い出す。ギャラリー開催中は社交場と呼ぶに相応しい雰囲気で、いつものヘアーサロンの顔とは違った。当サロンコンセプトでは“サロン(仏:Salon)とは社交場・談話室という意味合い、今後のヘアーサロンの方向性を思案”と謳っている。そんな生意気なコンセプトも掲げているものだから、自分自身にもそれなりに達成と高揚感があった。ただ振り返ってみると、普段とは違うゲストの表情や共有できた時間が何よりも貴重だったのだと感じる。以前と比べ、貸し出せるスペースに限りが出来てしまったものの現在も引き続き受付を行っている。