月別アーカイブ: 2016年3月

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最終のゲストを見送り、改めて自分用にコーヒーを淹れる。コポコポと音を立てるコーヒーメーカーを横目に日計表と月計表を綴った。決まって毎月のように “この日”がやってくる、とは思えない。月の最終日を迎えられる喜びと感謝の気持ち。それに反し、来月・再来月は果たしてどうだろうかといった思いも込み上げる。恐れてはならないと自身に言い聞かす。ある人は言った、経営者や代表者、個人自営業者は孤独に耐え続けなければならないと。ある人は言った『“待ちの仕事”ってのはさ、牛のよだれみたいなもんなんだよ。ほら、だら〜っとした垂れるように、ゆっくりとしか結果が伴わ無い。だからな、この業界で生き残りたいなら、永くしぶとく腰を据えることだ』と。

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( ´Д`) うーん、うまくいかんなぁ → とりあえずビール飲んで落ち着こか → \プシュ/→ ここをこうかな、いや、やっぱりああかな → 4月1日の差替え迄に間に合うんやろか → そだ、今日のブログを先に書いとこか → _φ(・_・カキカキ………… うわ、わかった。ああやったら上手くいきそうだ←イマココ

4月1日 no217ホームページ(トップページ)更新予定です。

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📖 ⑭

御堂筋とは“目と鼻の先”であるものの、オフィス街のテナントビル2階という立地。何もしなくとも周知してもらえる、なんてことはない。仕事のペースが掴めるようになると空き時間は近隣への挨拶回り、名刺交換だけではなく自身も客として伺う。手段を選ばず、顔と名前を覚えてもらえるよう努め、“ビックマウス”と“虚勢”を手にしたつもりだった。それでも此の期に及んでなお“羞恥心”が邪魔をする。思うように言葉が出ない。そんな時に店舗訪問へやってくる謂わば“営業のプロ”からノウハウを教わることができ、おかげで営業のコツを掴むことができた。後に『営業に来たよ』を建前に予約を取りに来てくださるなんて思ってもいなかった。

✂︎ Ep-103

『もう仕事辞めようかな…。私には向いてないもん』そう口にされると「そうですね」とも「そんなことありませんよ」ともとれるような曖昧な言葉を用意し「今回は何があったんですか?」と続ける。一通り話をうかがうも、私にはあなたに似合う仕事が何かを知る術が見当たらない。でもね、髪を大きくかき分けた後に颯爽と職場へ向かおうとする姿は戦士顔負けの勇ましさ。“向いている向いていない”の話は不毛だとさえ感じます。

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📖 ⑬

オープン前の準備期間中に対し、開店してからの時間の感じ方は異様なほど早かった。気がつくと季節は変わり、半袖で過ごせるようになっていた。立地による美容室での繁忙時期や時間帯は異なる。オフィス街という事も重なり、最終電車に揺られる日が続いた。この頃からだったか、通勤手段を変え、さらに定休日を金曜日と定めた。その当初、美容室では珍しいとされたオンラインでの予約システム。“一対一”のサロンスタイルであるがゆえ、予約のご連絡への対応が要だと感じた。ホームページにて予約状況を提示し、現状をあらかじめご確認いただく。そんなシステムがあれば良いなと思っていた。初めてのメール予約を頂いたのは夕暮れ時の中之島。用事があったのだろう。何を理由にそこに居たかまでは覚えがないものの、ケータイに届いた“ご予約の通知”につい声を上げてしまった事を記憶している。

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だらだらと引きずる寒さに耐えられず、今週も石油ストーブに頼りっきり。仕事の合間にビル1階のお花屋さん店主と一服。「この時期は寒くなったり暖かかったりですね」みたいな変哲のない話を切り出すと「昔から“花冷え”するって言うでしょ。この業界では桜が花を咲かせようと地熱を吸い奪ってしまうとも言われているんですよ」と。なんとも花人らしく粋な話。確かに夜桜は寒さに耐えながら、“花より団子”よろしく“花より日本酒”。今年の桜はいかほどか。夜空を彩る桜を待ち、余寒も耐えてみようか。

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先日一杯引っ掛けにお邪魔した『月とらくだ』のオーナーから財布の修理を承っていて、今日はその財布のメンテナンスday。

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本業の傍ら、2〜3年前から革細工と銀細工を細々と楽しんでいる。たまに「こんなん作って!」の依頼を受けたり、自分用の小物を作る。『月らく』オーナーの財布はプレゼントした物で、小銭入れとして2年ほど使ってもらっているだろうか。ファスナー部分がボロボロになってしまっても引き続き使ってくれていたみたいで、『壊れてしまった時に声を掛けてくれたら良かったのに』の返答が『ファスナー壊れてからも小銭落ちないし、大丈夫でしたよ』だったから、つい笑ってしまった。

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さっそく修理開始。まずは以前のファスナーを取り除く。革製品の良いところって何度も縫い直しが効くとこだったり、革の経年変化を楽しんだり、持ち主の身体に沿って皮が馴染むところ。丁寧に縫い糸をほどいていく。 続きを読む

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『もっと売上を伸ばしたいなら、声質と話し方を変えなさい』と言われたことがあった。美容師として一定の仕事量をこなす事ができるようになり、その次のステップを踏む為に当時の上司から教わった事。『声質を下げ、ゆっくりと話をしなさい』『気が急いてしまうと声質と足音に心境が表れる。自分の出す音をコントロールできてこそ、一人前ですよ』と。

それからというもの、歩き方とボイスコントロール・仕事のスタンスを変え、仕事の流れを逆算して考える習慣が身につくよう努めた。例えば、来店くださるゲストを見送る最終のイメージから始める。互いが『またね』と笑顔であれるイメージ。そのゲストの一番の笑顔が想像できれば最高だ。次に施術中にどのタイミングで話しを切り出すべきかを連想する。予め雑誌の記事を把握しておき、そのページを捲った切っ掛けでも良いだろうし、 続きを読む

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『安藤さん、世界一難しいとされる試験ってなんだと思う?』ゲストからの出題に答えられないでいると、こんな話を伺った。(一部に補填含)

車体が黒色で背が高いところから『Black Cab』の愛称で知られ、市民や旅行客からも尊敬されるロンドンのタクシードライバー。その名誉を勝ち取る為には“世界一難しい試験”と呼ばれる超難関をくぐらなければならないのだとか。ロンドン中心部から半径10km内にある2万5000本もの道路・建物・駅や公園などの2万カ所以上におよぶ公共施設、一方通行等の全ての道路事情を把握する必要があると定められている。640個の始点・終点からなる320ものルートのうち試験では一つがされ、特定地点の正確な位置と最短距離である道筋を地図に描き、そのルート上の全ての道路・交差点名を口答しなければならない。また、その間にあるホテルやレストラン名も随時把握しておく必要があり、変わりゆく町並みを自らの足で調査し続けなければならない。こうなるとホテルのコンシェルジュとなんら変わりない。ありとあらゆる事態を想定の中に組み込むだけでなく、咄嗟の機転や柔軟性も必要となるため“世界一”の称号がつくのも頷けた。

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シンボルといえばもう一つ。店内入口に飾ってある屋号をあしらった真鍮製のプレート。オープンの準備中、ホームセンターでたまたま手に取った用途不明の棒と英数字のno217を無理やり接着させている。“カンディンスキーのような〜”を一筆お願いするのと並行して、許可いただけたゲストへはポートレートの撮影をさせてもらっていた。その際に“217”の1と7が取れるとれる…。何度直してもまた取れるのくり返し。いっその事、本体と溶接してしまうこともできる。だけど、顔をしかめながら「ああ、また取れた..」ってやってるほうが性に合っている気がする。

✂︎ Ep-102

「ここで最後か…」カットが終わろうとしている時にそう呟かれた。覚悟はしていたものの、実際に転勤という言葉を耳にして今までの時間が思い返される。お見送りの際「忘れ物はありませんか?」の声掛けにニヤリと歯を見せ「またいつか…」という声。エレベーターが閉じた後もその声が耳に残る。

no217ブログひまつぶしにどうぞ一筆

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店内に30号位のキャンバスがあって、オープン当初にお越し下さったゲストの方達へ“一筆(ひとふで)”の依頼をし、制作された絵を飾っている。no217のシンボルのような存在で、後にmoonsoap滝井さんより“※カンディンスキーのような色づかいの絵“と称していただくことにもなった。筆を丁寧に入れてくださるゲストもいれば、こういうのは考えちゃダメ的な事を言うとサッと筆を走らすゲストがいたり。あれだけ“一筆でお願いしますよ”と伝えてるのにルールを破って思い思いに描いた後に“やっちゃった♡”みたいな顔して誤魔化すゲストがいたり…。
完成することのない絵にしたくて適度なところで一筆のお願いを止めてしまっているものの、たまに絵を眺めて自分自身は“筆をどう入れるかな?”を楽しんだりしている。

※参照元:MOONSOAP“keep a log-satellite
http://borderlesscare.seesaa.net/article/370535651.html

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📖 ⑬ 217のはじまり -2-

それはまるで映画のエンドロールから逆回転でタイトルへと戻る様だった。少し変な汗をかいた。オープン当日にまるで跡形もなく店内が消えてしまう描写のようにも思えた。なんだってオープンしたばかりに縁起でもない事を思うんだろう。不安に駆られながらその不思議な体験をシャンプー中のゲストへ伝えると、ガハハと大きく笑われた後に「いよいよ安藤君も、いち店主への一歩を踏み出したんだね。お店ってさ、店主が自分の店を好きになり過ぎたらダメなんだよね。一歩身を引いて考えないとさ、ゲストは窮屈だもん。それに、お客さん自身が店を一番好きでいてもらえる事が大切だし、そんなゲストが集まる店のオーナーは幸せだと思うな」と。パズルのピースがはまる気がした。
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📖 ⑫ 217のはじまり -1-

通常通りの手の動き。シャンプー台の高さ、シャワーヘッドの取り回し、水圧もしっくきた。初めてのゲストをシャンプーしている最中に安堵する自分がいた。2ヶ月間ものあいだ鋏を握る代わりに触れたことのない工具を手にしていた。もしかすると感覚が鈍るのではないかと危惧したが、杞憂に終わった。すると、次に感じたのがココは何処だろう…という違和感。とても不思議だった。予約表には以前から担当させていただいているゲストのお名前が並ぶ。にも関わらず、自分が立っている場所に覚えがない。久々のシャンプーで緊張していたのは確かだ。だったら呼吸を整えようと姿勢を正す。すると、今朝仕上がったばかりの店内が猛スピードで躯体へと戻っていく光景を目の当たりにする。

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壊れてしまったコロコロマシンを尻目に。キュートなお掃除部隊登場。

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上のお兄ちゃんの後を追って、弟くんも負けじと頑張る。

で、一通り掃除が終ると

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いつもの“グルグル”。結構本気のやつ。春から小学校に通う上のお兄ちゃん。弟くんは4歳。初めてのカットをさせてもらった時は気恥ずかしかったのか、目を背けてたのを覚えている。二人とも大きくなった。帰り際に「今度はお家に遊びにおいでよっ!!」って言ってくれるものだから、今度は逆に自分が気恥ずかしかったり。

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ご家族の皆さんがお帰りになると、まるで帰省シーズン後に残る空気感。

彼らの成長に合わせ、“グルグル”に磨きをかけなければと筋トレを企む夜でした。

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店内ソファーの下にラグを敷いていて、ここの掃除担当である“コロコロマシン”が壊れてしまった。コロコロペーパーを取り替えたくてもネジが外れない。ペンチで回したり、引いたり押したり。何をやってもダメ。こうなると、絵に描いた餅。頑固者は置いておいて、代用品を探した方が早そう。長さ1メートル程の木の棒はどうだろう?これが思惑通りで使いやすい。木の棒を長く持てば自らが“ちょこまか“動かなくとも幅広く掃除が済んでしまう。これは特許出願かと思い、念の為 [コロコロ 伸びる ]で検索。すると普通にそれっぽいのが出てくる。一過性の救世主だった木の棒と、妙にテンションを上げてしまった自分はその後も黙々と掃除を続けている。

✂︎ Ep-101

卒業式シーズン。学生や親御さんといった顔ぶれが続く。少し前に幼稚園を卒業されたと記憶していたはずが、次は中学への進学を控えられていたり。はたまた、“大学受験の勉強中に遊びに出掛けて怒られたんだ…”と照れくさそうに話をしてくれた男性が「そんな事もありましたね。春から社会人になります」と、大人びた口調へと成長されていたり。一年でその早さを最も感じる季節かもしれない。

新しい生活を前にそれぞれの想いがうかがえる。髪を整え、伸びた背筋に意気込みと逞しさも感じられた。

🚲💨 MOTRIPPER 〜有次の“おろし金”を求めて〜

ゲストと“長年愛用しているもの”というお題で“有次のおろし金”の話をうかがった。元は鍛冶屋、創業450年を越える京都の老舗。現在に至るまで包丁など調理器具全般の製作をおこなっている。製品の一つ一つを職人が手仕事で仕上げ、刃の研ぎやおろし金の目立ても店内でメンテナンスを施すという。“職人の手仕事・一生モノ・おろし金ですりおとす大根が旨い”この話を聞き、興味が湧かないわけがない。定休日にさっそく京都へ。本日より新しいカテゴリー🚲💨 MOTRIPPER(moto + tripper)はじまり、はじまり。

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AM10:30 出発
現在の愛車YAMAHA SR400のエンジンをかける。インジェクションに切り替わって大幅に改善されているが、それでも冬はエンジンがかかりにくい。一発で思い通りに始動できると『可愛い奴め』となる。そもそもこの手のバイクには「エンジンかけにくいからイヤ」って声もある。確かにそうだけど、その反面とても味がある。一旦キックのコツが掴めると更に愛着も湧く。ケッチン(エンジン始動の際、踏み込みに失敗するとキックレバーが鬼のような勢いで足へ跳ね返ってくる)したら足への多大なダメージを覚悟しないといけない。どうしてもエンジンがかからない時は押し掛けを余儀なくされるが、汗だくになるぐらい身体を温めてくれる。とにかく『チッ、可愛い奴め』となる。

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AM11:10
職場で用があり済ませると京都までのルートを考えた。実は“行き帰りではルートを変えなければならない”という自分だけのローカルルールがあって、半年前に地道一本で大阪〜広島へ行った時なんかは苦行に 続きを読む

no217ブログひまつぶしにどうぞアラジン

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ここ1週間の寒気で灯油が底を尽きてしまった。あと数日で暖かくなるとわかっていながらも、そのままやり過ごすわけにいかない。仕事の合間に最寄りのGSへ。青いポリタンクを台車に乗せてコロコロ。思いのほか外が寒くて背中を丸くした。ガソリンスタンドに着くと「満タン…?」の定型文の後に『半分ぐらいにしとく?』と付け足された。この時期は灯油ポリタンク半分ぐらいの需要が多いらしい。丸一日ストーブを点けて4~5日分といったところだろうか。追加の給油が先か、はたまたストーブをしまう為の掃除が先か。いずれにせよ春の訪れが待ち遠しい。

備忘録

朝の一件が気になり、ブログを書く際の注意点を自分なりに調べて纏めました。長いので途中で頁を設けます。

〜ブログを書く際の注意点〜
・フリー画像について
・写り込み、被写体の権利
・引用について
・リンクについて
・動画のエンベット(貼り付け)
・歌詞について

【フリー画像について】
写真やイラストなど画像には著作権がある。著作権者の許諾が無い場合は原則として使用できない。商用利用可能でクレジットが不要なフリー画像を集めた画像集サイトにおいては、そのサイトごとの規約に従う。

【写り込み、被写体の権利】
画像自体の権利とは別に、パブリシティ権・プライバシー権など写真内の被写体へも権利が存在している。フリー画像集においてもモデルの許諾の有無を確認する。また、人物に限らず被写体そのものが著作物であった場合にも著作物の権利者へ許諾が必要となる。

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予報通り雨。傘を片手に駅に到着。諦めのつくような天候の朝と仕事終わりに“一杯引っ掛けるやDAY”なら電車。で、さっきから捜し物が見つからず、あたふたしている。使用頻度の低い物や、無意識にその辺に“ポンっ”してしまった物は忘れた頃にしかでてこない。仕舞うとしたらここかな..。いや、こっちだったか..と、鞄の中をガチャガチャ。何故なのか、そういう時に限って捜索願いを出していた物が見つかったりもする。そろそろ収納整理上手に憧れるこの頃。それにしても、買ったばかりの切符。何処へいきましたかね…

それはそうと、ネット上に気になる記事を見つけた。その記事へ飛ぶリンクURLを添付しようかとも考えた。ところが、指が止まる。ブログ内での世間話はともかく“風刺”みたいな事は趣旨とも違う。そもそもリンクを貼る事自体に問題は無いのか。ブログで何がNGとされてしまうのか、分からない。敏腕主任の元にいたなら「だからお前は詰めが甘いんだよ!!!」と指摘をいただきそうだ。「さーせん。直ぐ…調べます」

archives 〜オープン編〜 あとがき

オープンまでの2ヶ月間を振り返ると、本当に想定できなかった展開ばかりでした。あらかじめ段取りをしていたとしても意図しない方向へ進んでいくものだと感じました。そんな時にこそ、背中を押してくださる方達や手を差し伸べてくださった方達が居て現在に至ります。そんな方達へ、そして現在こうしてご覧くださっているあなたへ、この場を借りお礼申し上げます。

さて、2週に渡り投稿しましたアーカイブスですが、一旦は他のカテゴリーの増設やリアルタイムな投稿をと考えています。

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📖 ⑪ 2012年2月28日

朝の6時頃だったか、仕上げの掃除を済ませたテナントを後にし、友人が運転する車の助手席に座っていた。連日のように徹夜続きで曜日の感覚もあやふや。時間の概念もしっかりしたものではなかった気がする。それでも気持ちは自然と前を向いていた。シャワーを浴びるため、一旦自宅まで送ってくれた友人は大阪へ出てきた18歳の頃に出会った男性。美容師として駆け出しの時代からずっと支えてくださるゲストの一人でもあった。いつか自分の店を持つ事を夢見て話を聞いてもらい、その度に『応援してるよ』と背中を支えてくれていた。紆余曲折ありながらも信じた夢に背を向けず、開店を迎えるに至った。

その日、車内からみた朝陽は早朝にも関わらず、暖かくてとても輝いていたような気がする。

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📖 ⑩ 2012年2月 -5-

机上での審査は良好とし、内装工事中の現場では突貫での作業が行われていた。時間との闘い。日々変わっていくその姿に一々感情的になっている余裕などなく、手にしたケータイで写真を収めるのが精一杯だった。2月も後半へ差し掛かると、シャンプー台やらの重機や商材、スクラップ工場で譲ってもらった廃材のインテリアが届く手筈となっていた。内装工事が終わらない限りテナント内に運びこむ事ができず、困りあぐねていた。そんな時はビルの管理人が空きスペースを利用して良いと許可してくださった。ゲストが様子を見にきてくださったり、既に持ち場が仕上がったはずの職人達が再度確認に訪れたり。最後までいろいろな方達が支えてくださった。舵を失い、暗闇で蹲ったままの泣きっ面は、いつしかその面影がなくなっていた。

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📖 ⑨ 2012年2月 -4-

内装工事の着工は2日後だった。もともとビルの内外装を担当されていただけあって手筈も早かったが、なによりも嬉しかったのが集まった職人達の表情に少しも曇りがなかったことだった。複数の案件を同時に熟しているにも関わらず『事情は聞いてる。後は任せろ』そう言わんばかりの眼差しに何度も救われた。ようやく風が吹き始めた。そんな気がした。残された期日はおよそ3週間。それまでに内装工事はもちろん、並行して美容室開業の仮申請を手続きしなければならない。申請には美容師免許・管理美容師免許・開業申告書・健康診断書などが必要となり、それに加えて現場での採光量や二酸化酸素の検知。シンク等の水道周りの設置が適切か、衛生管理法に基づく処置が行われているか等、様々な項目をクリアしておかなければならない。幸いにもここに関しては保健所担当員との面識が持てていたので、概ね確定が望めた。

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📖 ⑧ 2012年2月 -3-

“やっぱりな…?“ 自分の顔は再び呆気に取られた表情へ。実はこの男性、ほぼ同時期にtakekou BLDGの改装を任された建設会社の代表だった。後から聞いた話しでは、他のテナントの方達やビルの改装を手がける職人さん達の間で、素人ながら連日解体作業を行っているものの進行状況が思わしくないのでは?と話題に上がっていたらしい。そのことが目の前に立っている男性の耳へも入り、それで様子を見にきてくださったとの事だった。何がなんだかわからない状態できょとんとしていると、男性は続けてこう言った。『店内のイメージはできていますか?』『我々はデザイナーではない。店内のデザインは一緒に作りますよ』と。そして最後に『なにがあっても、2月中にオープンできると信じてください』と。

📖 ⑦ 2012年2月 -2-

戸惑いを隠せない自分に対し、先に作業着姿の男性が声をかけてくれた。きっとその男性は驚いたはずだ。自分の顔はまるで店舗オープンを目前とし「これから頑張ります」という覇気など失われていたはずだから。それでも男性は静かに、そしてとても優しい表情で『どうしたんですか。全て話してください』と続ける。その声につられるよう嗚咽と共にこれまでの経緯を話した。どれぐらいの時間を要したか覚えがないものの、全ての思いを告げることができた。その後に男性は思いのほかあっさりと『やっぱりな』と口にする。

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📖 ⑥ 2012年2月 -1-

2月になったからか、それとも暖房器具が使えないからか。とにかく寒かったのを覚えている。それに加え、備わっていた照明も解体作業中に取っ払ってしまい、裸電球が二つほどしかない。何もできない事を知りながらも、その日もテナントへ来ていた。隅に腰掛け、背中を丸くし、ぼんやりと部屋を眺めていた。気がつくと日は沈みきっている。静まり返ったテナントと、まるで時が止まってしまったかのような心境。ゲストへ“オープンの遅延告知”を決意しようとしていた。すると、それに合わせるかのように二階エレベーターの扉がゆっくりと開く。それはまるで静寂を切り裂くような眩しさで、“一筋の光“とはこういう事を指すのかもしれないと思えたほどだった。

📊 “黒歴史対策会議”

仮の217ホームページから正式ホームページに変更されたのがオープン2ヶ月後ぐらいだった。当初からブログやSNSを組込んだ仕上がりを想定していて、一番最後に実装となったのがこのブログサイト。丸4年経って本サイトが完成するぐらいだから、のんびりしてると言うか腰が重いというか。そう言えば、“ひまつぶしにどうぞ”を始める前にゲストから「ちゃんと続けられるの?」「大丈夫?」とのお声掛け。そんなゲスト達と続けられなくなった(飽きちゃった)時の事も考えてみようという話に。妙案だと思ったのが“黒歴史になりかけたらすかさず撤収作戦”。しれっと217のホームページを一新する。ブログサイトの痕跡すら抹消するというわけ。なんとも感慨深い作戦であります。

なまえをきめてください

☕ なまえをきめてください_

『ひまつぶしにどうぞ』というタイトルは割と早い段階に決まっていた。最初こそ“ああでもないこうでもない”って考えてたけど、ブログって書く側も読む側も双方にゆとりがあるからこそ成り立つのかなと、そう思ったのがネームの始まり。ホっと一息をいれる。そんな時のお供に一杯のコーヒー。勝手ながら、サブタイトルは自身に宛てたテーマ。“主人公に名前をつけてください”的なゲームの初期設定も半日は名付けで終わり“スキルポイントの振り分け”も難儀する。せっかくのゲームもスムーズに遊べない質だったりで、案の定no217の屋号も時間がかかってしまった。悩んだ挙句、美容師免許取得後に割り当てられる美容師番号217839の上3桁で決定。安直万歳🙌勢い大事。

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📖 ⑤ 2012年1月 -5-

チリ・ホコリが舞わなくなった。オープンの予定まで一ヶ月を切ろうとしている。これが小説なら、ちょうど半分を過ぎたあたりだろうか。そこから先のページが一瞬にして白紙になった。変化の無いテナントを見つめ続け、何度も涙を堪える。オープンを待っていてくださるゲストの方々、独立を志す事に対し背中を押してくださった以前のオーナー、夜中であっても快く改装を手伝ってくれた友人。自身を支えてくださる方達へ『約束が守れません』『もう少し時間を与えてやってください』そう伝えなければならない不本意な気持ちが込み上げる。それと同時に、なぜこうなるのかという悔しさから白紙になったページと気持ちは、黒く、黒く、塗りつぶされていった。

📖 ④ 2012年1月 -4-

オープンまでの期間中。ドラマチックな展開など期待していなかった。課題やトラブルは付き物。それでも円滑に進むよう望んでいた。過去に読んだ小説の中に“人を傷つけない“をポリシーとしたギャング達が事を起こし、決まって『ロマンはどこだ?』と口にするシーンがあったのを思い出す。そのフレーズを目にする度、次はどんな事が待ち受けているのだろうとページを捲るのが楽しみでならない。小説は愉快で痛快な描写が多かった。ところが、実際のドラマは愉快でもなければ痛快でもないようだ。雲行きが怪しくなってきたのは解体作業が終わった1月の後半。綺麗さっぱりもぬけの殻となったtakekou BLDGの二階は、まるでギャングでもやってきて全てを持ち帰った後のような姿。その後には真新しい内装用の材料や、それを組み付ける職人達の声がある予定だった。

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📖 ③ 2012年1月 -3-

以前はオフィス仕様だったテナントの解体作業を2週間で終わらせ、床材として使用されていた正方形のカーペットを何十枚と重ねると、まるでカットチェアーの様になった。「じゃあ、鏡も必要だ」って事で、その辺に転がっている廃材を適当に立て掛ける。カウンセリングから最終の仕上げまでを自らが担当させて頂く。そんなコンセプトはスタイリストになった頃から温めていた。長年目指してきた形が少しだけ見えてきた喜びと、ホコリ塗れになりながらも無事に解体作業を行えた安堵。腰痛と疲労感は微塵も感じられなかった。公約通り2月中にサロンをオープンできるに違いない、そう思い込んでいた。

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📖 ② 2012年1月 -2-

解体作業の経験など無かった。それに加えて知識も皆無。与えてもらった期限は2週間で、出来るところまでという約束。ホームセンターへ行き、それらしい道具を漁りテナントへ戻ると考えるより先に行動へと移った。無心で床材や壁、天井を剥がし始める。朝から晩まで、時には夜を徹した日もあった。解体のコツを掴めるようになるとテナントへ足を運ぶのが楽しくてならなかった。腰痛に耐え、ホコリ塗れになりながらも日に日に躯体へと近づいていく姿は、長年佇むビルの一部が徐々に本来の形へと戻るように見えた。それを目の当たりにする度に嬉しいという感情が湧き上がる。まるでビル本来の姿と店舗としての始まりの姿を照らし合わせるかのようだった。